※ アップ再開です(^^;。
出発から四日目の5月1日。朝起きると前日の予報通り雨。しかも暴風雨。うーむむむ…。

ほんとは一日がかりの知床自然観察ガイドウォーク(いわゆるエコツアーですね)をする予定だったのですが、この天気なのでひとまず中止。しかしガイドさんと相談をした結果、午後の天気が回復したら半日のガイドウォークをしてもらえることになりました。風雨が止むのを祈ります。
とは言え、このまま宿にいても仕方ないので知床五湖へとりあえず向かいます。知床五湖駐車場で車を降りるとすさまじい風。レインウェア上下に身を包み展望台へ耐風姿勢で進みます。普通に歩いていると吹き飛ばされてしまいそう。

分厚い雲の下、展望台から残雪の向こうに知床一湖が見えます。小高い丘にある展望台では一層風は強く、腰を低くして手すりにぐっと寄りかかって体を固定しないと写真を撮ることもままなりません。
しかし、展望台から駐車場の売店に戻りしばらく待機してると風雨が弱まってきました。これ幸いと知床一湖と二湖を巡る遊歩道へと向かいます。ヒグマが寄ってこないように音を立てることを意識しつつ、食事中のエゾシカの脇を通ってのんびり歩きます。
一時間くらい辺りをうろうろした後でしょうか。雨は止み、風は落ち着き、知床連山(下の写真左上)にはまだ雲がまとわりついているものの知床一湖の上空には青空が現れてきました。わおぅ。

暴風雨を押して知床五湖までやってきて少しでもいいから知床の自然に触れたいという思いが、知床に受け入れられたのかもしれないと思うと無性に嬉しくなってしまいます。
この神がかり的な天気の回復により午後は自然観察ガイドウォーク開催が決定。ガイドさんを入れて5人の少人数パーティーで歩くことになりました。少人数パーティーなのでコース取りも柔軟対応。そこで、僕達は一般的なコースではなく少し道を外れたちょっぴり冒険コースをリクエストします。
知床自然センターから出発してすぐの草原からは羅臼岳(下の写真右端)を最高峰とする知床連山がその全容を見せてくれています。

少し歩くと汗ばむくらいの初夏の陽気。まさかここまで天気が回復するとは誰が予想できたでしょうか?
ここ知床半島にはエゾシカがすごく多く、僕らが通ったケモノ道はシカの糞だらけ(笑)。シカ密度は奈良公園に劣るものの、間近で見る野生のエゾシカは迫力満点。ただ、この時期の多くのオスは落角(らっかく)しているようで、残念ながら立派な角を持っているエゾシカには会えませんでした。シカの角は一年周期で生え変わるのです。
立派な角を持っているオス=強いオス=大ハーレムを形成できるオスなのですが、一年に一回角を落とすことで他のオスにも翌年以降リターンマッチの可能性が出てくるわけですね。来年はがっつり栄養とって立派な角をつけるぞ!って。自然ってうまくできている。あ、これは人間の勝手な解釈ですね。
しかし、立派な角を持つオスが仮に大ハーレムを形成できたとしても繁殖期の秋に子作りを頑張りすぎるので、そのオスは越冬に十分な食料をとることができません。このため、立派すぎるオスは春を待たずにその生涯を閉じることが多いとか。過ぎたるは及ばざるが如しというのは自然界でも真理なのでしょうか。厳しい…。
エゾシカや知床の植生についての説明を受けながらゆっくりゆっくり歩いていくと、ヒグマの冬眠穴のところへやってきました。

ヒグマは、仮死状態になって冬眠するリスとは異なり、冬眠するときも体温は37度くらいあるそうです。冬眠中もあんなでっかい体で普通に代謝するので冬眠前後にはすさまじく食物をとらないといけないのですね。
食物と言えば、ヒグマはキノコや山菜が大好物。すなわち、キノコ狩りや山菜採りをする人はヒグマと競って食料の取り合いをしているということになります。キノコ狩りや山菜採りに行ってヒグマに襲われる人が多いのは当たり前といえば当たり前の話なのですね…。
このヒグマの冬眠穴の周りは静かにして耳を澄ますと野鳥のさえずりが沢山聞こえてきます。コゲラ、アカゲラ、カケスなどなどが辺りを飛び回っているのを普通に目撃することができます。これだけ鳥が沢山いると野鳥観察も楽しい!双眼鏡の使い方にも慣れてきました。
しばし野鳥観察を楽しんだ後、今度は海に向かってずんずん歩いていきます。すると、たくさんのエゾシカが夕方の食事をしている崖の上の草原にたどり着きました。ここは海からの風が強いため木が育たず草原になっているそうです。

上の写真前方は断崖絶壁。その途中からは伏流水がダイレクトに滝となって海に落ち込んでいます。左手奥の断崖の途中からは同じようにダイレクトに海に落ち込んでいる知床八景の一つである「フレペの滝」があります。
この滝が流れ出る断崖はとても見ごたえのある景色。遊覧船が断崖のそばまでやってきます。しかし、遊覧船のスピーカーから大音量で流される音声が鳥の営巣を妨げていることもあるそうです。落ち着いて子供も育てられないというわけです。観光と環境、なかなか難しい問題です(僕も観光客の一人…)。
難しい問題というと、エゾシカと樹木の問題もあります。草が枯れてしまう冬はエゾシカが樹皮をエサにします。しかし、木は樹皮を通して水分・養分を吸い上げているため、樹皮が幹の一周ぐるりと食べられてしまうと、もうそれ以上その木は生きていくことができなくなり立ち枯れてしまいます。そんな立ち枯れてしまった木は沢山ありました。どちらか一方を保護すればいいわけではないのが難しい。
そんないろんなことを見たり聞いたりしながら歩き夕方近くなると段々と空は雲に覆われ、気温は下がり、雨粒がポツポツ降ってきました。残雪に足をとられながらも少しペースを速めて歩き、日本最大のキツツキであるクマゲラのあけたでっかい穴や、木に付けられたヒグマの爪跡や、山ぶどうの木などなど、いろんなものを見て説明を聞いていきます。
とても楽しかった自然観察を終え、ガイドさんの事務所に戻ります。事務所ではコーヒーをいただきながら引き続き知床自然豆知識を教えてもらったりします。すると「エゾシカの気分を少し味わってみませんか?」ということで、ガイドさんお手製の角付きヘルメットをかぶることになりました。

これはかなり立派な角なのですが、ものすごく重い!手で保持しても首が辛いくらい。こんな重い角をつけて走り回ったり、他のオスと戦ったりするからエゾシカのオスの首ってぶっといのですねぇ。
ちなみに、今回お世話になったのは「知床ネイチャーオフィス」さんというエコツアーの会社。今年4月に設立したばかりの新しい会社でみんなとっても一生懸命。しかも、社長さんや今回のガイドさんも実は自然観察ガイドとしてのキャリアは長いのでとっても安心して楽しく歩くことができました。お勧め。
ポツポツ降り始めていた雨は、宿に戻って夜になると本格的な冷たい雨へと変わりました。
暴風雨→快晴→冷たい雨などとくるくる変わる天気は知床特有とのこと。
この日はいろんな意味で思う存分「知床らしさ」を味わうことができて、幸せな気分で眠りにつくのでありました。
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